熱帯魚の飼育記録

主にベタの記録

家庭で行うベタの孵化直後の稚魚飼育について

 初めてベタ繁殖をしてみたいと思い、ネット記事やYouTubeで色々調べてみたのですが情報がバラバラでイマイチ分かり難かったんですがたぶん多くのベタ稚魚飼育初心者の方も同じだと思います。

 

 私はメダカの稚魚飼育の経験はあるのですが、メダカと同じくベタも孵化直後の1週間が一番難しいとされ、初めての稚魚飼育だと感覚が分からず苦労しました。

 

 ブリーダーや販売業者などのプロ目線からでは無く、

家庭で、イチ個人が、誰でも出来る、

スタンダードなベタ稚魚飼育の方法を書いていければと思います。

(成功体験から来る感覚的な話しが殆どなので過度なツッコミをされてもまともな返答はできかねます…ご了承ください)

 

1.事前準備

 インフゾリア(ゾウリムシ)を充分な量を培養しておく必要があります。

 インフゾリアは勝手に沸いてくるなんて言われますが、一般的に清潔に保たれた室内飼育環境の水槽にインフゾリアが沸いた所で微々たる数ですし、そもそも今回紹介する飼育環境の水槽ではインフゾリアはほぼ沸かず外部から与えるしかないです。よって事前に準備しておく必要があります。

 ゾウリムシの培養はタネさえあれば簡単ですのでお好きな方法でどうぞ。我が家はペットボトルにエビオスかPSBを入れて培養してます。

 ゾウリムシの与え方は後述しますが、余裕を持って最低でも1ℓペットボトル2本は培養しておくとエサを切らす心配が減ります。

 

2.卵の人工孵化

 なぜ人工孵化なのかと言うと、

・食卵が怖い

・親の飼育水をそのまま使うと卵にカビが生えそうで怖い

・別にオス親の世話が無くても稚魚の孵化率は変わらない説(寧ろオス親が稚魚を口に含んで世話をする行為自体が繊細な稚魚にダメージを与える可能性がある)

 以上の理由からです。

 結果的に有精卵の9割以上が孵化をし、横泳ぎまで成長しました。

 

・人工孵化の環境

①卵用に新規の稚魚水槽を用意します。15〜30㎝の水槽が無難。

 ベアタンク水槽です。カルキ抜きした水を入れます。ろ過バクテリアが住み着いたいわゆる出来上がった水である親の飼育水を使うと良いと言われていますが、カビの原因になる面もあります。なので我が家は綺麗な真水から卵の孵化を始めます。

 

②水温24〜30℃ になるようヒーター等で加温。

 このとき水中ヒーターを使う注意点ですが、ヒーターを横置きにしてしまうと遊泳力の低い稚魚がヒーターの上に落ちてヒーターの熱で死んだ経験があるのでヒーターは立て置き設置で使った方が良いです。

 また、水温が高いほど稚魚の代謝が高まり、孵化が早かったりその後の成長も早くなるようです。

 ベタの稚魚飼育はデリケートで孵化直後が一番難しく、『初期は特に早く成長させたもん勝ち』みたいな面が大きいので出来るだけ高めの水温で飼育をして成長を促したいです。

 逆に水温が低すぎると成長速度が遅れ、必然的に難易度の高い稚魚飼育の期間が伸びてしまいます。適正範囲内であれば水温が低くとも実質的な稚魚への悪影響はそこまで無いとは思いますが上記の理由であまり推奨はしません。

 

③繁殖を終えたら泡巣の卵を稚魚水槽に入れ、強めにエアレーションをかける。

 止水域を無くし、水槽内の水を循環させて卵のカビを抑制するためです。浮いてる卵や底に沈む卵がありますが構わずエアレーションをかけます。

 早いと2日せずに孵化する個体もいるのでエアレーションは産卵から1日経ったら早めに止めます。

 (以前、卵が舞うくらいのエアレーションがベストだと思っていて、ペットボトル内でガンガン回していましたが孵化せず卵が全滅した経験があるので過剰過ぎると良くないと思った)

 

3.孵化〜横泳ぎするまで

・孵化1日目

 我が家は26℃のヒーターを使用し実質水温25℃前後の環境で2日目から孵化が始まりました。

 泡巣も無く、底に落ちた卵は平気なのか、と心配になりますが、大丈夫です。水面に浮いてる卵から孵化した稚魚はそのまま水面にくっついてぶら下がってますし、底で孵化した稚魚は横たわったままか、時折上へ泳いで水面にくっつこうとします。

 ベタ稚魚の飼育経験が少ないと、こんな横泳ぎもできない稚魚はエサを食べられないだろうし大丈夫なのか…メダカの針子のように最低でも普通に泳げるくらいになってくれ…

と、底に横たわっていたり縦泳ぎして水面にぶつかるベタ稚魚を眺めていると心配になりますがほっといて見守りましょう。

 

・孵化2日目

 成長の早い稚魚は横泳ぎ、というかまともに泳がず横を向いて水面や水槽の壁にくっつき始めます。横になってくれるとちょっと安心してくる…(変わらず底で横たわってる稚魚も居ますが気にせず…)

 稚魚にはヨークサックお腹に栄養があり、そもそも口も完全に出来上がらないらしいのでまだエサは与えなくてもいい。

が、水温高めで飼育している場合などで稚魚の成長が早い場合は1日前倒しでゾウリムシを与え始めていいと思います。

 我が家の水温25℃飼育のこの時期の実際の所感ですが、口が完成してエサを食べ始められそうな成長の早い個体が居る可能性を考慮して早めにゾウリムシを与えてみた事があります。ですが、殆どの稚魚は積極的に泳ごうとせず捕食行動すら取っている様子は見受けられなかったので焦ってエサを与える必要は無いかなというのが感想です。

 

・孵化3日目

 半数前後は横泳ぎしてくれるようになる。安心。底に横たわる稚魚もまだまだいるが個体が正常であれば結局そのうち普通に泳ぎ出すので気にしなくて良いです。

 ここからゾウリムシを与えていきます。

 ゾウリムシの与え方は調べたところ有識者でも人それぞれありましたが、我が家は少し手間が増えます。

 ゾウリムシの培養した水はアンモニアが多く水を汚してしまうので稚魚水槽に極力入れたく無いです。なのでゾウリムシを与える際は、コーヒーフィルターでゾウリムシだけをこしとって稚魚水槽に入れます。

今回の我が家の稚魚水槽は真水から水槽立ち上げをし、マジックリーフも未使用な事もあり、水質悪化は大敵です。なのでゾウリムシの培養水は極力入れたくなかったんです。

 与えるゾウリムシの量は水槽全体に常にゾウリムシがうっすら漂っているのが目視出来る程度です。例に我が家では1日に1回、1ℓペットボトルの半分くらいの量のゾウリムシを濾して与えてました。

わりと大量にゾウリムシを与えますが、前述した通りにコーヒーフィルターでゾウリムシだけを抽出して与えるのでゾウリムシを大量に与えても稚魚水槽の水が汚れ難いです。

この後の数日間の飼育でも同様ですが、ゾウリムシを多めに与えておけば半日以上は保つのでラクです。

 全体に漂うくらいとか多めとか与える量がアバウトにしか伝えられていませんが、『エサ少なくて餓死されるくらいなら多めに与えとけばええやろの精神』っていう感じで受け取ってもらえればと思います()

 注意点ですが、あまりにもゾウリムシが多いと水槽内が酸素不足や、ゾウリムシの死骸で水質悪化や、稚魚のストレス、等になる場合もあるらしいのでご留意ください。(まぁ我が家では常時かなり大量にゾウリムシ入れてましたが何も問題無かったのでそこまで神経質に気にしなくても大丈夫だと思います)

 

4.横泳ぎした後

 孵化から4〜5日も経てば成長の遅かった稚魚も含め、殆どの稚魚がしっかりと横泳ぎしているでしょう。よく目を凝らして稚魚とゾウリムシを見ていると捕食している所を見れます。

ゾウリムシの食べるスピードが格段に上がって消費が増えるのでゾウリムシ培養は余裕を持って多く作っておきたいです。

 孵化から1週間前後ほど経ったら一度ブラインシュリンプを与えて良いと思います。成長の早い個体であれば4〜5日でブラインシュリンプを食べ始める個体も我が家では居ました。

ブラインシュリンプは栄養があるので稚魚に早いうちから与えたいですが食べる個体と食べない個体がまだ居て食べ残しも出てしまうので、あくまでメインはゾウリムシでサブにブラインシュリンプを与える。って感じで少量から始めると良いと思います。

 稚魚が5㎜ほどになってくるとほぼ全ての稚魚がブラインシュリンプを食べてくれるようになります。ここまで来ると安心して良いと思います。急激な水質変化さえさせなければ普通にエサを食べてどんどん大きくなります。

 

 以上の方法で卵から孵化後の1週間を飼育できると思います。

 この方法で死んだ稚魚は10匹も居なかったですし、居ても孵化時点で弱っていたり横泳ぎができなかったりと先天的なものが原因で落ちた稚魚がほぼだと感じました。

 この後の飼育については稚魚全てが毎日ブラインシュリンプを食べられるようになったら難易度がグッと下がるので各自で色々試して良いのではないでしょうか。

 

5.その他

・マジックリーフの必要性

 稚魚成魚問わずベタと言えばマジックリーフですが、私は使いませんでした。結果的にマジックリーフ無しでも稚魚が落ちることは無かったので別に必須では無いと思いますが、あるに越した事はないと思いますので持っていたり不安であれば是非入れて良いと思います。

 

・エアレーションの必要性

 多くの有識者がエアレーションは不要と言っている通り私もいらないと思います。エアレーションの小さな水流ですら生まれたての稚魚にはダメージです。

 

・フィルターの必要性

 どちらでも良いと思います。未使用の場合は大きめの水槽で飼育し水質悪化を緩やかにしたり、底床掃除と足し水をこまめにしたりなど。

 使用の場合推奨はスポンジフィルターです。エアレーションの代わりにもなるので助かる。水流は水槽全体はほぼ止水に近いかなり弱くなるようにした方が良いです。広めの水槽であれば水槽の反対側はフィルターの水流がほぼ届かない程度が理想。

 私は孵化後1週間が経ち、稚魚が最低限遊泳力を身に付けた段階で30㎝ワイド水槽にスポンジフィルターを付けました。

 

・ソイルの必要性

 極小の卵やまだ遊泳力の無い稚魚などがソイルの隙間に落ちてしまう危険性があるので、そうならないような粒の小さい吸着系ソイルであれば敷いて良いと思います。ソイルは水質悪化を抑えてくれるので助かりますが、今回のような飼育方法のベアタンク水槽でも大丈夫だったのでお好みで。

 もう一つ難点は、ブラインシュリンプがソイルの隙間に入ってしまいがちな事です。ベアタンクであれば底に沈むブラインシュリンプも残さず食べて貰えますが、ソイル飼育では隙間に死骸が溜まり水質悪化が早まります。

稚魚が成長するにつれてブラインシュリンプの給餌の量も増える事も考えると、ただでさえ底床掃除が面倒なベタ稚魚水槽にソイルはミスマッチ気味だと思います。

 

水草の必要性

 ベタ繁殖を水草水槽やベアタンクなど様々な環境で行っている方が居るように水草はあってもなくてもどちらでも良い思います。

水質浄化をしてくれるのでベアタンク水槽には多少は入れると良いと思いますが、稚魚水槽にはエアレーションをかけられない性質上、水草による夜間酸欠が怖いので多く入れるのはやめた方がいいと思います。

 

・稚魚用の粉エサについて

 我が家にメダカの稚魚用の粉エサが残っていたので試しに稚魚に与えてみましたがほぼ食べませんでした。

特に孵化直後の稚魚は水中内の生活水深が上層(水面)よりも中層や下層を泳いでいる事が多いためそもそも水面のエサを認識できていないと思われます。

加えて、稚魚はエサの感知力が低いこと、粉エサはニオイなどアピール力が低いこと、などが相まって粉エサはエサと認識すらされ難いのではないかと考えます。

 無駄に粉エサを与えて水質悪化を招くよりおとなしくブラインシュリンプである程度の大きさまで成長させた方が良いと思います。

 

・PSBの必要性

 PSBについては話しが長くなるので簡潔に言うと、今回の飼育方法では水質浄化作用の効果が見込めず、寧ろ不用意な水質悪化に繋がる危険性があり水質変化に敏感な稚魚には避けたかったので使いませんでした。

 また、PSB自体はそのままでは稚魚のエサにならないと考えています。

ただ、

PSBをゾウリムシに食べてもらい→

そのPSBゾウリムシを稚魚にたべてもらう

という生物濃縮のサイクルを経ることで間接的にPSBを稚魚に与える事はできますのでPSBでゾウリムシを培養すると良いと思います。

 

・ゾウリムシは使わず孵化直後からブラインシュリンプを与えるという話し

 孵化して3日目の初めてのエサからブラインシュリンプを与えるという有識者の話しを見たことがあります。私の少ない経験上というか稚魚を間近で見た感想では、殆どの孵化直後の稚魚は口が小さすぎて物理的にブラインシュリンプは食べられないというのが印象です。

 でも親ベタがジャイアントなどでサイズが大きくてそこから生まれてくる卵や稚魚も初期サイズが大きいと仮定するならばその稚魚は最初からブラインシュリンプを食べられるんでしょうか…?

 稚魚飼育に失敗したくない初心者はゾウリムシはマストだと思います。

 

・水替え、底床掃除、足し水について

 特にベタ稚魚は急な水質変化に敏感で死にやすいので要注意。生後2週間は大きな水替えはしない方が良いです。

 底床掃除はブラインシュリンプの死骸や水槽の底の汚れが少し気になったらスポイトで取ってその分少量の足し水をしてました。そこまで神経質にならなくても急な水質悪化はしないと思いますが、底床掃除は1〜3日に1回くらいの頻度でやると丁寧。

 水替えは稚魚が1㎝未満の段階であれば1週間に一度1/5前後の換水。

 足し水の際の経験談なのですが、どうしても稚魚の水槽の引越しをしたくなり大量の足し水をしたのですが、点滴方で時間をかけてかなりゆっくりと足し水をしたところ稚魚が落ちる事も無く大丈夫でした。足し水をする際は水量が多い場合数回に別けるなどゆっくり行いましょう。

 繊細なベタ稚魚の水替えは怖さがあるので放置しがちですが、ベアタンク水槽だと特に水質悪化が危ないので放置もしない方がいいです。丁寧な注水をすれば水替えは出来るのでこまめに面倒見てあげたいです。

 

・カルキ抜き水道水での人工孵化の所感

 親の飼育水を使わず、マジックリーフも無く、ろ過バクテリアも居ない、カルキ抜きした綺麗な水道水から飼育スタートしましたが特にデメリットも感じられず問題がありませんでした。

 そもそもろ過バクテリアが居なくても稚魚飼育環境程度では水の汚れるスピードがかなり遅く、また稚魚が育つスピードと同様に水槽内のバクテリアも徐々に増えていくので水槽内のバランスが崩れず、割りと理にかなった飼育方法なのかもしれません。

 卵のカビについてですが、カルキ抜き水道水で管理をしてもカビが生えた卵が出てきました。が、カビが生えたのはいずれも無精卵だけでした。

ベタの卵は元々どんな環境でも、有精卵はカビが生えにくく無精卵は生えやすいものなのかもしれませんが、有精卵の孵化率はほぼ100%でしたので安全性を高めたい人にはカルキ抜き水は充分オススメはできると思います。

 

・稚魚の間引きについて

 賛否両論ありそうな問題だと思いますが間引きを前提で話します。

 上記のブラインシュリンプを食べられる稚魚の話しに通じるのですが、早い段階にブラインシュリンプを食べられるような強く大きな稚魚だけを生き残らせてその他を間引く。という方法もあると耳にした事があります。

もちろん大きければ良い個体だ、というわけではありませんが、少なくともブラインシュリンプを食べられない個体は成長が遅かったり泳ぎが下手だったりと何かしら問題を抱えてる可能性を秘めているので分かりやすく間引く対象として選別する事ができます。(ナゼだかいつまでもゾウリムシだけを食べていてブラインシュリンプを食べず、成長が遅く身体の小さな個体とか普通に出てきたりしますしね…)

 とはいえ、体型や体色が最重要とされるベタにとっては丈夫な個体が成魚になれば良いという話しではないのも確かです。成魚まで育ててみなければ良個体かどうか判別出来ない事もあり、多くの稚魚を育てて良質な成魚を作り出す確率を上げる。というのは理にかなってますが、明らかに成長や調子の悪い稚魚はその後まともに成長するかは怪しいので無理に拘らず間引いて良いと思います。

 ペットショップ寄附やフリマ販売などで繁殖したベタを消費するにしても不良個体だと貰い手も困りますので自分で飼育できないのならば間引いてあげるしかないです。

 

さいごに

 ブリーダーでも業者でもないイチ個人の稚魚飼育経験談なので親近感や再現性が伝わればいいなと思いながら書きました。

 もちろん、より良い飼育環境にする事は可能ですが、ベタ稚魚飼育を個人で始める際、経験の少ないうちから最適解の環境を準備するのは困難です。今回の記事はあくまで稚魚の安全ラインを確保しつつ飼育方法を簡素化してみた一つの方法ですので、手軽に稚魚飼育の経験を積む際の初めの一歩に向いてると考えました。

 

 ネットで集めた多くの知識を取捨選択して実行して成功した一つの成功例です。一つの参考資料として少しでも誰かの参考になれば幸いです。